高齢者がふんふん言うのは病気?考えられる原因と家族にできる対策

人生を豊かにするシニアの知恵

ご家族に、高齢者がふんふん言うような、あるいは唸り声のようなものを無意識に出す様子が見られて、心配に思っている方はいらっしゃいませんか。高齢者が常に声を出していたり、老人特有のウンウン、んーんーといった声が聞こえてきたりすると、これは一体なぜなのか、何かの病気のサインではないかと不安になるのは当然のことです。

特に、本人はふんふん言う癖があるとは自覚しておらず、まるで志村けんがやっていたひとみばあさんのように聞こえるその声のことで失敗や後悔をしないためにも、原因をしっかり知りたいと考えるでしょう。もしかしたら認知症でうんうん言うのはどういう症状ですか、といった疑問や、高齢者がしゃべりが止まらないのはなぜですか、という別の悩みにもつながるかもしれません。

この記事では、高齢者の唸り声が無意識に出てしまう背景にある、様々な原因を詳しく解説します。また、高齢者のせん妄の特徴はどれか、あるいはその特徴は何かといった具体的な症状から、ご家族ができる高齢者の唸り声対策、そして穏やかな関係を築くための高齢者との話し方の特徴まで、幅広く掘り下げていきます。

記事のポイント
  • 高齢者が無意識に声を出してしまう様々な原因
  • 認知症やせん妄など、考えられる病気との関連性
  • 家族が家庭でできる具体的な対策と心構え
  • 専門医に相談する際のポイントと診療科の目安

高齢者がふんふん言う行動の様々な原因

ここでは、高齢者が無意識に「ふんふん」と声を出してしまう行動の背景にある、様々な原因について解説します。

老人はなぜ無意識に唸るのか

高齢者が本人の意思とは関係なく唸り声を出してしまう場合、その背景には身体的な不快感や精神的な要因が隠れていることがあります。

まず考えられるのは、痛み、かゆみ、便秘、空腹、あるいは体のどこかが苦しいといった身体的な不快感です。加齢に伴い、自分の状態を的確に言葉で表現することが難しくなる場合があります。そのため、言葉にならない不快感を「うー」「あー」といった唸り声で表現しているのかもしれません。これは、本人にとってのコミュニケーション手段の一つと捉えることもできます。

また、精神的な要因も大きく関わっています。例えば、環境の変化に対する戸惑いや、一人でいることの孤独感、将来への漠然とした不安などが、無意識のうちに声となって表れることがあります。特に、ご家族の関わりが少なくなったり、日中の活動量が減ったりすると、内的なストレスが唸り声として出やすくなる傾向が見られます。

これらの唸り声は、必ずしも深刻な病気の兆候とは限りませんが、ご本人が何かを発信しようとしているサインである可能性を念頭に置くことが大切です。

認知症で「うんうん」言う症状とは

認知症の症状の一つとして、無意識に「うんうん」とうなずきながら声を出したり、独り言を繰り返したりする行動が見られることがあります。これは認知症の中核症状である記憶障害や見当識障害などから派生する、行動・心理症状(BPSD)の一環として現れることが多いです。

例えば、レビー小体型認知症では、実際にはいない人が見える「幻視」という症状が特徴的です。ご本人は、その見えている人物と会話しているつもりで「うんうん」と相槌を打っているのかもしれません。周囲からは奇妙に見えますが、本人にとっては現実の出来事なのです。

また、アルツハイマー型認知症では、記憶が断片的になったり、自分が今どこにいて何をしているのか分からなくなったりすることで、強い不安や混乱を感じることがあります。その不安を紛らわすためや、自分自身を落ち着かせるために、無意識に声を出している可能性が考えられます。

このように、認知症で「うんうん」言う行動は、単なる癖ではなく、病気の症状によって引き起こされる脳の機能的な問題が背景にあります。そのため、この行動自体を無理に止めさせようとすると、かえってご本人を混乱させ、症状を悪化させる恐れがあるため注意が必要です。

高齢者のせん妄の特徴について

「せん妄」は、特に高齢者に見られやすい一時的な意識の混乱状態を指し、唸り声や意味不明な発言の原因となることがあります。認知症と混同されがちですが、せん妄は原因を取り除けば改善する可能性がある点で大きく異なります。

せん妄の主な原因は、身体的な負担です。例えば、手術後、脱水、感染症(肺炎や尿路感染症など)、薬の副作用、あるいは慣れない病院への入院といった環境の急激な変化などが引き金となります。これらの要因によって脳の機能が一時的に低下し、意識が混濁してしまうのです。

症状にはいくつかの特徴があります。まず、症状が現れたり消えたりと、一日の中でも状態が変動しやすい点が挙げられます。特に、周囲が暗く静かになる夜間に症状が悪化する「夜間せん妄」はよく知られています。また、幻覚や錯覚を伴い、興奮して大声を出したり、逆に活動性が著しく低下してぼーっとしてしまったりと、症状の現れ方には個人差があります。

ご家族が「いつもと違う」「急におかしくなった」と感じた場合は、せん妄の可能性があります。これは治療可能な状態であることが多いため、早急にかかりつけ医や専門の医療機関に相談することが鍵となります。

それは癖?高齢者が常に声を出す理由

高齢者が常に声を出している場合、単純な「癖」として片付けられない、様々な医学的な理由が考えられます。

一つは、耳鼻咽喉科領域の「加齢性音声障害」です。これは、年齢と共に喉の筋肉が衰えたり、声を出すための声帯が萎縮したりすることで起こります。声帯がうまく閉じなくなるため、息が漏れやすくなり、本人が意図しない場面で「ふー」といった息の音や、かすれた声が出てしまうのです。この場合、声を出す訓練やリハビリテーションが有効なことがあります。

次に、成人の「チック症」も原因の一つとして挙げられます。チック症は子どもの病気というイメージが強いかもしれませんが、大人でも発症・持続することがあります。咳払いや鼻すすり、唸り声といった音を出す「音声チック」が、本人の意思とは無関係に繰り返し現れます。ストレスや疲労によって症状が悪化しやすい傾向があります。

さらに、呼吸器系の疾患、例えばCOPD(慢性閉塞性肺疾患)なども考えられます。肺の機能が低下しているため、少し動いただけでも息苦しくなり、その結果として「ふんっふんっ」という荒い鼻息や呼吸音が漏れることがあります。安静時には目立たなくても、動作時に顕著になるのが特徴です。

このように、単なる癖に見える行動も、背景には治療や対応が必要な状態が隠れている可能性があるのです。

志村けんの「ひとみばあさん」がふんふん言う背景

画像出典:お笑いナタリー

「うちのおばあちゃんが、まるでひとみばあさんみたいにふんふん言う」といった話を聞くことがあります。これは、志村けんさんが演じた有名なコントキャラクター「ひとみばあさん」の特徴的な行動になぞらえた表現です。

動画出典:トライアングルch

コントの中のひとみばあさんは、度の強い眼鏡をかけ、常に「ファンファンファンファン」と荒い鼻息を立てているのがお約束のギャグでした。また、耳が遠くて話が噛み合わなかったり、行動がずれていたりする様子が笑いを誘いました。

この「ふんふん」という音は、前述の通り、医学的には様々な原因が考えられます。例えば、呼吸器系の問題で息が苦しい状態や、加齢性音声障害による息漏れなどが、キャラクターの「ふんふん」という音と似て聞こえるのかもしれません。

ご家族がこのようにおっしゃる時、その裏には「年を取って、以前とは違う少し変わった様子が見られること」への戸惑いや心配が込められていると推察できます。キャラクターの名前を出すことで、深刻な状況を少し和らげて表現しているとも考えられます。重要なのは、その「ふんふん」という音が、単なる面白い癖なのか、あるいは何らかの体の不調を示すサインなのかを冷静に見極めようとすることです。

高齢者がふんふん言う時の適切な対処法

ご家族が「ふんふん」と声を出している時、どのように対応すれば良いのでしょうか。ここでは、具体的な対策や心構えについて解説します。

高齢者の唸り声への具体的な対策

高齢者の唸り声に対して、ご家族が家庭でできる具体的な対策は、まず原因を探ることから始まります。

第一に、身体的な苦痛がないかを確認します。例えば、「どこか痛いところはない?」「お腹は苦しくない?」などと優しく問いかけ、表情や体の動きを注意深く観察することが大切です。便秘や脱水、発熱といったサインを見逃さないようにしましょう。部屋の温度や湿度が快適か、衣類がきつすぎないかなど、環境面からのアプローチも有効です。

第二に、精神的な安心感を与えることです。唸り声が不安や孤独感から来ている場合、そばに寄り添って手を握ったり、背中を優しくさすったりするスキンシップが心を落ち着かせる効果を持つことがあります。ご本人が好きだった音楽をかけたり、昔の写真を見ながら思い出話をしたりして、穏やかな時間を作るのも良いでしょう。

最も重要な注意点は、唸り声を頭ごなしに叱ったり、無理に止めさせようとしたりしないことです。本人は無意識に出していることがほとんどであり、叱責はかえって不安を煽り、症状を悪化させる原因になりかねません。まずは原因を探り、不快を取り除き、安心感を与えるという視点で対応することが、問題解決への第一歩となります。

高齢者との話し方の特徴とコツ

無意識に声を出している高齢者とコミュニケーションを取る際には、いくつかの特徴を理解し、コツを押さえることが穏やかな関係を築く上で助けになります。

まず、高齢者との会話では「急かさない、否定しない、自尊心を傷つけない」という3つの「ない」が基本です。話がうまくまとまらなくても、最後までゆっくりと耳を傾ける姿勢が、ご本人に安心感を与えます。途中で話を遮ったり、「そうじゃないでしょう」と否定したりすることは避けましょう。

次に、話しかける際の物理的な工夫も大切です。加齢により聴力が低下している場合が多いため、正面から、相手の目を見て、少し低めの声で、はっきりと話すことを心がけます。背後から急に話しかけると驚かせてしまうため、視界に入ってから話しかけるのがマナーです。

また、一度に多くの情報を伝えようとせず、「ご飯にしましょうか?」「次はお風呂に入りましょうか?」のように、一つの質問や提案を簡潔に伝えるのがコツです。言葉だけでなく、ジェスチャーや実物を見せながら話すと、より理解が深まります。このような丁寧な関わりが、ご本人の混乱を減らし、結果として無意識に出る声の減少につながることもあるのです。

周囲の「ふんふん言う人」への接し方

ご家族の中に「ふんふん言う人」がいる場合、介護する側の精神的な負担も大きくなりがちです。ご本人への対応と同時に、自分自身の心のケアも忘れてはなりません。

まず、その声が聞こえてきても、「また始まった」とすぐにイライラするのではなく、「何かサインを出しているのかも」と一歩引いて客観的に捉えるよう意識を変えてみましょう。声の原因が身体的な不調や不安にあると理解できれば、腹立たしさよりも、心配やいたわりの気持ちが生まれやすくなります。

それでも、四六時中その声を聞いているとストレスが溜まるのは当然です。そのような時は、一人で抱え込まず、他の家族や友人に話を聞いてもらったり、一時的にその場を離れて深呼吸をしたりして、自分の気持ちをリセットする時間を作りましょう。デイサービスやショートステイなどの介護サービスを利用して、物理的に距離を置く時間を作ることも、お互いにとって非常に有効な手段です。

大切なのは、「完璧な介護」を目指さないことです。介護者が心身ともに健康であってこそ、良い介護が続けられます。専門家や地域のサポートを積極的に活用し、介護者自身の負担を軽減する方法を探ることが、長い目で見て双方にとって良い結果をもたらします。

老人が出す「んーんー」という声への対応

ご高齢の方が「んーんー」といった、まるで呻くような声を出し続ける場合、その背景にある原因を多角的に考える必要があります。

考えられる原因と対応策を以下の表にまとめました。

考えられる原因特徴家族ができる対応・注意点
身体的な不快・痛み体をよじる、特定の場所を気にする、苦しそうな表情などが見られることがある。「どこか痛い?」と確認し、湿布を貼る、楽な姿勢にするなど試す。改善しない場合は医師に相談する。
認知症の症状不安そうな様子、落ち着きのなさ、周囲を気にしているなどが伴うことがある。側で優しく声をかける、手を握るなどして安心感を与える。本人が好きな活動に誘い、気を紛らわせる。
せん妄急に始まり、夕方から夜にかけて悪化することが多い。話のつじつまが合わない。まずはかかりつけ医に相談し、原因となっている身体疾患の治療を優先する。部屋を明るくし、静かな環境を保つ。
精神的なストレス・不安環境の変化後や、一人でいる時に多く見られる。コミュニケーションの時間を増やす。日中の活動量を増やし、生活にメリハリをつける。

このように、「んーんー」という声一つをとっても、様々な可能性が考えられます。一つの原因に決めつけず、ご本人の様子を注意深く観察し、それぞれの状況に合わせた対応を試みることが大切です。どの原因か判断に迷う場合や、症状が続く場合は、迷わず専門家を頼りましょう。

高齢者がしゃべりが止まらないのはなぜか

「ふんふん」という声とは逆に、高齢者が一方的にしゃべり続けてしまう、いわゆる「多弁」という状態が見られることもあります。これもまた、ご家族にとっては悩ましい症状の一つです。

この背景には、主に脳の機能低下が関係していると考えられます。前頭葉の機能が低下すると、感情や欲求のコントロールが難しくなります。その結果、相手の状況を考慮せずに話したいことを話し続けたり、同じ話を何度も繰り返したりしてしまうのです。これは、認知症の初期から中期にかけて見られることがあります。

また、強い不安感や寂しさから、誰かに関心を持ってほしくて、気を引くために絶えず話しかけてくるという心理的な側面も無視できません。話を聞いてもらえている間は、孤独感が和らぐため、しゃべることが安心につながっているのです。

対応としては、話を完全に遮断するのではなく、「そうですね」「なるほど」と適度に相槌を打ちながら、別の活動に誘導するのが効果的です。例えば、「そのお話、面白いですね。そろそろお茶にしませんか?」と提案し、場面を切り替えることで、話の流れを自然に断ち切ることができます。根気強い対応が求められますが、ご本人の不安な気持ちに寄り添う姿勢が基本となります。

「老人ウンウン」への家族の向き合い方

ご家族が「ウンウン」と常に声を出している状況に直面したとき、介護者はどのように心構えを持てばよいのでしょうか。

最も大切なのは、その行動を「問題行動」として捉えるのではなく、「何らかのメッセージ」として理解しようと努めることです。ご本人は、言葉では表現できない苦痛や不安、あるいは幻視のような認知症の症状によって、そのような声を出しているのかもしれません。その背景を想像することで、介護者の受け止め方も変わってきます。

次に、一人で全てを解決しようとしないことです。かかりつけ医やケアマネジャー、地域包括支援センターなど、相談できる専門家はたくさんいます。客観的な視点からのアドバイスは、ご家族の精神的な負担を軽減し、新たな解決策を見出すきっかけになります。原因を特定し、適切な医療や介護サービスにつなげることが、ご本人にとってもご家族にとっても最善の道です。

そして、ご自身の休息を確保することも忘れないでください。介護は長期戦になることが多く、介護者が倒れてしまっては元も子もありません。介護保険サービスなどを上手に利用し、「介護しない時間」を作ることで心に余裕が生まれ、再び穏やかな気持ちでご本人と向き合うことができるようになります。

高齢者がふんふん言う背景を理解する

この記事を通じて解説してきたように、高齢者が「ふんふん」と無意識に声を出す行動には、実に多様な背景が存在します。ご家族にとっては心配の種であり、時にはストレスの原因にもなり得ますが、その一つ一つの声が、ご本人からの何らかのサインである可能性を理解することが、対応の第一歩となります。最後に、この記事の要点をまとめます。

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