「最近、親の足元がおぼつかなくて心配…」「自宅で安全に過ごすために、何かできることはないだろうか」。高齢のご家族を持つ方にとって、転倒は大きな不安の一つです。高齢者の転倒転落防止にはどうすればいいですか？という問いは、多くの方が抱える切実な悩みと言えるでしょう。
特に、硬いフローリングでの転倒防止は高齢者にとって重要な課題であり、クッション性のあるカーペットの導入や、階段の滑り止め対策は有効な手段です。しかし、転倒対策としてマットや介護用マットレスを検討し始めると、「介護用マットレスの選び方は？」「床ずれ防止機能は必要？」「転倒時に役立つ介護マットってどんなもの？」「介護用マットのサイズは何種類ありますか？」といった、次から次へと疑問が湧いてくるものです。
また、話題の衝撃緩和マット「ころやわ」について、家庭用の値段はどのくらいなのか、通常の値段との違いも気になるところです。さらに、介護用マットレスをニトリのような身近な店舗で探すべきか、専門店が良いのかも迷うポイントではないでしょうか。
この記事では、そのような疑問や不安を解消するため、高齢者向けの転倒防止マットを多角的に比較し、ご家庭の状況に合わせた最適な一枚を見つけるための情報を提供します。
高齢者の転倒防止マット比較の基礎知識
高齢者の転倒転落防止にはどうすればいいですか？
高齢者の転倒事故は、骨折や頭部外傷といった深刻な事態を招きかねず、その後の生活に大きな影響を及ぼす可能性があります。東京消防庁のデータによれば、救急搬送される高齢者の事故のうち、転倒は大きな割合を占めており、その多くが住み慣れた自宅で発生しています。そのため、まずは住環境に潜むリスクを減らすことが、転倒防止の第一歩となります。
基本的な対策として、まず家の中を整理整頓し、床に物を置かないことが大切です。つまずきの原因となる電気コードは壁際に固定し、部屋の出入り口や廊下にあるわずかな段差にはスロープを設置して解消しましょう。また、夜間にトイレへ行く際なども安全に移動できるよう、廊下や足元に十分な明るさの照明を確保することも有効な対策です。
さらに、履物も見直したいポイントです。滑りやすいスリッパではなく、かかとが覆われていて滑り止めが付いたルームシューズなどを選ぶことで、足元の安定感が増します。
これらの基本的な対策に加えて、転倒時の衝撃を緩和し、転倒そのものを予防する目的で、マットやカーペット、滑り止めなどを適切に活用することが、より安全な住環境づくりにつながります。
フローリングの転倒防止に高齢者ができること
おしゃれで掃除がしやすい一方、フローリングは高齢者にとって転倒のリスクが高い場所の一つと考えられます。その理由は、表面が硬く滑りやすいという特性にあります。靴下やストッキングで歩くと摩擦が少なく、ふとした瞬間に足が滑ってしまう可能性があります。
万が一転倒してしまった場合、硬い床面が体に与える衝撃は大きく、大腿骨や手首の骨折といった大怪我につながりやすいのです。こうした怪我がきっかけで入院や手術が必要になり、結果として身体機能が低下し、寝たきりや要介護状態に至るケースも少なくありません。
フローリングでの転倒リスクを減らすために高齢者ができる対策はいくつかあります。まず、滑りにくい性質を持つワックスを選ぶことや、前述の通り、滑り止め機能のある室内履きを使用することが挙げられます。
しかし、最も効果的な対策の一つは、床材そのものの安全性を高めることです。具体的には、フローリングの上にクッション性の高いカーペットや衝撃吸収マットを敷くことで、滑りにくさを確保すると同時に、転倒時の衝撃を大幅に和らげることができます。フローリングの良さを活かしつつ、危険なエリアに部分的にマットを敷くだけでも、安全性は格段に向上するでしょう。
高齢者の転倒防止にカーペットは有効？
フローリングの硬さや滑りやすさが心配な場合、カーペットの設置は非常に有効な対策です。カーペットは、その素材と構造から、高齢者の転倒防止に二つの大きなメリットをもたらします。
一つ目のメリットは、滑りにくさです。カーペットの表面にある繊維（パイル）が、歩行時に足裏をしっかりと捉え、フローリングに比べて格段に滑りにくくなります。これにより、歩行時の安定感が増し、転倒のリスクそのものを減らす効果が期待できます。
二つ目のメリットは、優れたクッション性です。カーペットのパイルと下地構造は空気を含んでおり、これが天然のクッションとなって衝撃を吸収します。日本カーペット工業組合が行った実験でも、カーペットはフローリングなどの硬い床材に比べて衝撃吸収性が著しく高いことが示されています。万が一転倒してしまっても、カーペットが衝撃を和らげ、骨折などの大怪我に至るリスクを低減させます。
ただし、カーペットを導入する際には注意点もあります。部屋の一部に敷く部分敷きのカーペットやラグマットは、その縁にわずかな段差ができます。足が上がりにくくなっている高齢者は、この段差につまずいてしまう可能性があります。また、滑り止め加工が不十分な製品は、カーペット自体が滑ってしまい危険です。対策としては、部屋全体に隙間なく敷き詰めるタイプのカーペットを選ぶか、部分敷きの場合は裏面に強力な滑り止め加工が施されたものを選び、端がめくれないように固定することが大切です。
階段の滑り止めで高齢者の安全を確保
家の中で最も転倒事故が起こりやすい危険な場所の一つが階段です。昇り降りする動作はバランス感覚と筋力を要するため、高齢者にとっては特に負担が大きく、一度足を踏み外すと重大な転落事故につながる可能性があります。このため、階段に滑り止めを設置することは、家庭内の安全対策として非常に重要です。
階段用の滑り止めには、主に3つのタイプがあり、それぞれに特徴があります。
| タイプ | メリット | デメリット・注意点 |
| マットタイプ | 踏み面全体をカバーでき、クッション性も期待できる。裏面が吸着するタイプは設置が簡単。 | 折り曲げ部分がない製品もある。汚れた場合の掃除が手間になることがある。 |
| コーナータイプ | 最も滑りやすい階段の角（段鼻）をピンポイントで保護できる。耐久性が高く、見た目もすっきりしている。 | 踏み面全体の滑り止めにはならない。木製階段専用の製品が多い。 |
| テープタイプ | 設置が手軽でコストを抑えられる。透明なタイプなら階段のデザインを損なわない。 | 粘着力が弱まると剥がれてくる可能性がある。クッション性はほとんどない。 |
マットタイプは、カーペット素材やゴム素材などがあり、クッション性を重視する方におすすめです。コーナータイプは、樹脂製やゴム製で、特に滑りやすい角部分を確実にグリップさせたい場合に適しています。テープタイプは、手軽に安全対策を始めたい場合に便利です。
また、製品によっては消灯後や停電時に光る蓄光ラインが入っているものもあります。これにより、夜間の視認性が高まり、より安全に階段を使用できます。ご自宅の階段の材質やデザイン、使用する方の身体状況に合わせて、最適なタイプの滑り止めを選ぶことが大切です。
転倒時の衝撃を和らげる介護マットとは
転倒防止対策を万全に行っても、転倒のリスクを完全にゼロにすることは困難です。そこで重要になるのが、万が一転倒してしまった際の被害を最小限に食い止めるという考え方です。この目的のために開発されたのが、衝撃緩和マットや衝撃吸収マットと呼ばれる介護用のマットです。
これらのマットは、主にベッドサイドやトイレ周り、ソファの足元など、転落や立ち上がり時のふらつきによる転倒が起こりやすい場所に敷いて使用します。その最大の特徴は、優れた衝撃吸収性能にあります。内部にウレタンフォームやゲル、特殊なポリウレタン素材などを用いることで、転倒時に頭部や腰、大腿骨といった骨折しやすい箇所にかかる衝撃を効果的に吸収・分散し、重篤な怪我のリスクを大幅に軽減します。
衝撃緩和マットを選ぶ際には、いくつかのポイントを確認する必要があります。第一に、十分な衝撃吸収性能があるかはもちろんですが、マット自体の厚みも重要です。厚すぎると逆につまずきの原因になるため、適度な厚みで、マットの縁がスロープ状に加工されているものが望ましいでしょう。
また、マットの裏面に滑り止め加工が施されているか、表面が汚れた際に拭き取りやすい防水素材かどうかも、安全性と衛生面を保つ上で大切な確認項目です。車椅子を使用する場合は、スムーズに乗り上げられるかどうかもチェックしておくと良いでしょう。
介護用マットのサイズは何種類ありますか？
介護用のマットレスやマットを選ぶ際、サイズは非常に重要な要素です。一般的な寝具とはサイズ規格が異なる場合が多く、特に介護ベッドと合わせて使用する際には、必ずサイズを確認する必要があります。サイズが合っていないと、マットレスがずれて隙間ができ、利用者が転落したり、ベッドフレームに手足を挟んだりする危険性が高まります。
介護ベッドのサイズは、利用者の身長や体格、介助のしやすさを考慮して設計されています。そのため、マットレスもそれに合わせて複数のサイズが展開されています。
主に確認すべきは幅と長さです。
購入やレンタルを検討する際には、まず現在使用している、あるいはこれから使用する介護ベッドのサイズ（内寸）を正確に計測することが不可欠です。その上で、ベッドのサイズに適合し、かつ利用者の体格や寝返りの状況に合った幅と長さのマットレスを選ぶようにしましょう。特に電動ベッドの場合は、背上げや足上げの動きにマットレスがしっかり追従するかどうかも確認が必要です。
用途別・高齢者向け転倒防止マット比較
介護用マットレスの選び方は？
介護用マットレスを選ぶ上で最も大切なのは、利用者の身体状況、つまり「介護度」に合わせて最適な素材や機能を持つ製品を選ぶことです。身体の状態に合わないマットレスは、かえって動きにくさを生んだり、床ずれの原因になったりする可能性があるため、慎重な選択が求められます。
介護度別に見たマットレスの選び方の目安は、以下のようになります。
| 介護度（目安） | おすすめの素材 | 特徴と選び方のポイント |
| 要支援1～2<br>（自力で起き上がれる） | スプリング式<br>（ボンネルコイル、ポケットコイル） | 適度な硬さがあり、手をついて起き上がりやすい。端が沈み込みにくい「サイドエッジ」が硬いものを選ぶと、立ち上がり時も安定する。 |
| 要介護1～2<br>（つかまれば寝返り・起き上がり可能） | 高反発ウレタン | 適度な反発力で寝返りをサポートする。体が沈み込みすぎないため、動きやすい。 |
| 要介護2～3<br>（寝返りに介助が必要） | 低反発ウレタン<br>ウレタン・スプリング混合 | 体を優しく包み込み、体圧を分散させる。ただし、動きにくくなる場合もあるため、身体能力を見極める必要がある。 |
| 要介護4～5<br>（寝たきりに近い） | エアマット<br>ジェルマット | 非常に高い体圧分散性能を持つ。エアマットには、自動で体位変換を行う機能付きのものもあり、介助者の負担を軽減できる。 |
この他に、身体状況の変化に対応しやすいリバーシブルタイプも便利です。硬い面と柔らかい面を使い分けられるため、リハビリの進行度に合わせて寝心地を変えることができます。
また、お手入れのしやすさも重要な選択基準です。失禁などの可能性がある場合は、汚れを拭き取りやすい防水加工や清拭対応のカバーが付いたマットレスが衛生的です。丸洗い可能な製品もありますが、その場合は利用者がベッドを離れられる時間があるかどうかも考慮する必要があります。
床ずれ防止を考えた介護用マットレス
寝たきりの時間が長くなると、体の同じ部位に継続的に圧力がかかり、血行が悪くなることで皮膚やその下の組織がダメージを受けてしまう床ずれ（褥瘡）のリスクが高まります。床ずれは一度できてしまうと治りにくく、利用者に大きな苦痛を与えるため、予防することが何よりも大切です。
その予防の鍵となるのが、体圧を一点に集中させずに広範囲に分散させる体圧分散性能に優れた介護用マットレスです。一般的なマットレスに比べて、介護用に設計された製品の多くは、この性能を重視しています。
体圧分散性能が高い素材としては、主に以下のものが挙げられます。
床ずれ防止を考えるなら、利用者の自力での体位変換能力をまず評価することが重要です。自分で動けるうちはその能力を活かせるマットレスを選び、寝返りが難しくなってきた段階で、体圧分散性能がより高いマットレスへの変更を検討するのが良いでしょう。
介護用マットレスはニトリでも購入可能？
お値段以上。のキャッチフレーズで知られるニトリは、家具や寝具を幅広く取り扱っており、電動リクライニングベッドや、それに合うマットレスも販売されています。そのため、介護用のマットレスもニトリで探せるのでは？と考える方は少なくないでしょう。
実際にニトリの店舗やオンラインストアを見てみると、電動ベッド用マットレスとして、Nスリープシリーズなどのポケットコイルマットレスが販売されています。これらは電動ベッドの背上げ・脚上げの動きに対応できるように設計されており、一般的な家庭用としては十分な寝心地と機能を持っています。
しかし、これらの製品が介護専用のマットレスと全く同じかというと、異なる点に注意が必要です。介護用品専門店や福祉用具レンタルで扱われる本格的な介護用マットレスは、前述の通り、体圧分散性能による床ずれ防止機能や、介助のしやすさを考慮したサイドエッジの硬さ、失禁に対応する完全防水・清拭対応といった、より専門的な機能を備えていることが一般的です。
したがって、以下のように利用者の状況によって選択肢が変わると考えられます。
- ニトリ製品が選択肢になるケース:
- 専門の介護用マットレスが必要なケース:
ニトリの製品はコストパフォーマンスに優れていますが、利用者の身体状況を第一に考え、より専門的な機能が必要な場合は、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談の上、パラマウントベッドやケープといった専門メーカーの製品を検討することをおすすめします。
話題の家庭用ころやわの値段を調査
近年、高齢者の転倒対策として注目を集めているのが、株式会社Magic Shieldsが開発したころやわマットです。このマットの最大の特徴は、普段は硬くて歩きやすいのに、転んだ時だけ柔らかく凹んで衝撃を吸収するという画期的な機能にあります。
この特殊な構造により、衝撃吸収性は欲しいけれど、柔らかいマットは足元が不安定で逆につまずきそうというジレンマを解消します。杖や歩行器、車椅子を使っても沈み込みにくく、日常生活の動線を妨げません。
家庭で利用できるころやわマットには、設置場所に合わせた様々なサイズが用意されており、値段はサイズによって異なります。以下に主な製品のサイズと価格の目安をまとめました。（価格は変動する可能性があるため、公式サイトで最新情報をご確認ください）
| 製品ラインナップ | サイズ（幅×長さ×厚さ） | 価格（税込・送料無料）の目安 | 主な用途 |
| ベッドサイド用 S | 90cm × 120cm × 1.2cm | 46,200円 | ベッドサイド |
| ベッドサイド用 M | 90cm × 150cm × 1.2cm | 57,200円 | ベッドサイド |
| ベッドサイド用 L | 120cm × 180cm × 1.2cm | 68,200円 | ベッドサイド、ポータブルトイレ周り |
| 廊下用 ショート | 60cm × 180cm × 1.2cm | 39,600円 | 廊下 |
| ジョイントマット | 50cm × 50cm × 1.2cm | 1枚 3,300円 | リビング、居室など（自由なレイアウト） |
価格だけ見ると他の衝撃緩和マットより高価に感じられるかもしれません。しかし、これは単なるクッション材ではなく、歩行時の安定性を損なわずに、万が一の際の骨折リスクを低減するという高度な機能を備えているためです。
特に、リハビリを頑張っている方や、活動性を維持したいと考えている高齢者のご家庭にとって、ころやわマットは安全と安心を両立できる有力な選択肢の一つと言えるでしょう。
高齢者の転倒防止マット比較で最適な選択を
これまで見てきたように、高齢者の転倒防止や安全対策として使用されるマットには、様々な種類と特徴があります。最適な一枚を選ぶためには、この記事で得た知識をもとに、利用者の身体状況や生活環境、そして何よりも「何のためにマットが必要なのか」という目的を明確にすることが不可欠です。
コメント